秋になると、スーパーのきのこの棚が急ににぎやかになります。なめこ、舞茸、しめじ、えのき。どれも安いし、体にもよさそうだし、つい何袋かまとめて買ってしまう。ところが数日後に冷蔵庫を開けると、袋の内側が水っぽくなっていて、結局まとめてみそ汁に沈めて終わり。そういう秋を、私は何年も繰り返してきました。
きのこを使い切れない原因は、たいてい買った日の下処理でつまずいています。なかでも迷いやすいのが「洗うかどうか」です。結論から言うと、なめこも舞茸も、基本は洗わなくていい。水にあてないほうが、うま味も香りも残ります。
山形県酒田市に住みながら、東北観光推進機構 東北PR局 山形県アンバサダーとして地元の食材を追いかけています。この記事では、なめこと舞茸を洗わなくていい理由から、株付きと真空パックそれぞれの手順、冷凍でうま味が増える仕組み、そしてレンジだけで10分でできる作り置き2品までをまとめました。
ここを押さえておくと、秋のきのこは「安いから買うもの」から「買った日に仕込んでおくもの」に変わります。平日の夜、ふたを開ければもう一品ある。その状態を作るのが目的です。
やま君なめこって、ぬめりを洗い流したらもったいない気がして、毎回そのまま鍋に入れてる。
宮さん逆に舞茸は土がついてそうで、つい水でジャバジャバ洗っちゃうのよね。

荒生沙緒利
SAORI ARAO
- 山形県アンバサダー@東北観光推進機構 東北PR局
- フリーアナウンサー
- 山形県酒田市在住
なめこも舞茸も洗わなくていい|水にあてないほうがおいしい理由

きのこ全般の常識は「洗わない」です。水にあてると風味が飛び、水溶性のビタミンB群が流れ出て、食感まで水っぽくなる。ここまではよく知られています。なめこも例外ではありません。
なめこも「洗わない」でいい
「ぬめりがあるから洗うもの」と思われがちですが、あのぬめりこそが、なめこのうま味と食感の正体です。水で流せば、そのぶん味が薄くなります。しかもなめこは水分が多く、洗うと傷みやすくなり、粒もくずれやすい。スーパーに並ぶなめこの多くは菌床栽培で育てられたもので、袋から出してそのまま鍋に入れて大丈夫です。
なめこを洗うかどうかは、レシピサイトでも生産者の間でも意見が分かれています。きのこの生産者へのアンケートでは、きのこ全体で4人に3人が「洗わないほうがいい」と答えています。私も、洗わない側です。
水にくぐらせたくなるのは、次の2つのときだけです。袋の中におがくずの粒が見えるときと、開けた瞬間にツンと酸っぱい匂いがするとき。そのときも流水でザーッと流すのではなく、ボウルにためた水にやさしくくぐらせる程度にとどめてください。もみ洗いや浸けおきはしません。
舞茸・しめじ・えのきも洗わない
舞茸は、洗わないほうがいいきのこの代表格です。市販の舞茸はほぼすべてが菌床栽培で、管理された環境で育てられているため、そもそも土がついていません。汚れて見えるのは土ではなく、菌床のかけらや変色した部分がほとんどです。
そこへ水をあてると、舞茸の身上である香りが真っ先に逃げます。かさが水を吸ってしまうと炒めても焼いても水っぽく仕上がり、あの歯ごたえが戻ってきません。気になる汚れがあれば、乾いたペーパータオルで軽く押さえるだけにしてください。しめじもえのきも同じ考え方でいいです。
なめこは、袋の中に汁が溜まっていないものを選びます。汁が出ているのは日が経っているサインで、酸味が出やすいからです。舞茸は反対に、かさの色が濃くて縁がピンと張っているもの。手に持ったときに軽く感じるくらいが、水を吸っていない証拠です。どちらも買った日のうちに下処理まで済ませてしまうのが、いちばん失敗しません。
なめこの下処理|株付きも真空パックも洗わずに使う

お店で売られているなめこは2種類ありますが、どちらも水では洗いません。水で流すのは、落ち葉や虫がついている山採りの天然ものだけです。やることは多くありません。表にまとめました。
| 形状 | 手順 | かかる時間 |
|---|---|---|
| 株付き(かたまりのまま) | 根元の石づきを切り落とす → 手でばらす → 洗わずにそのまま鍋へ | 約1分 |
| 真空パック・袋入り | 袋を開けて、洗わずにそのまま鍋へ(おがくずや酸っぱい匂いが気になるときだけ、ボウルの水にくぐらせる) | 約10秒 |
| 天然もの(山採り) | 石づきを落とす → 落ち葉や虫を確かめながらザルで流す → 必ず加熱する | 約5分 |
株付きの石づきは、包丁で切り落とします。もったいなく感じますが、切るのは本当に根元の硬い部分だけで十分です。ばらすときは手でほぐしたほうが、粒がつぶれずにきれいに分かれます。
なめこは必ず加熱してから食べてください。生のまま口にするきのこではありません。大根おろしと和えるときも、いったんさっとゆでるか、レンジで加熱してから冷ますのが正しい手順です。山で採ってきた天然ものは、種類の見きわめができない場合は口にしないでください。
舞茸の下処理|包丁を使わず手で裂くだけ

舞茸は、下処理という言葉すら大げさなくらい簡単です。市販のものは石づきがすでに取り除かれていることが多いので、硬い根元が残っていればそこだけ切り落とし、あとは手で裂いていきます。
包丁を使わないのには理由があります。舞茸は繊維に沿って裂くと断面がぎざぎざになり、その凹凸に味がよくからむからです。裂く大きさは、ひと口で食べられるくらい。細かくしすぎると、加熱したときに舞茸らしい歯ごたえがなくなってしまいます。
舞茸にはたんぱく質を分解する酵素(プロテアーゼ)が多く含まれています。生の舞茸を茶碗蒸しに入れると卵が固まらなくなるのは、この酵素が卵のたんぱく質を分解してしまうためです。防ぎたいときは、100℃の湯で30秒以上湯通しして酵素の働きを止めてから使ってください。裏を返せば、この性質は肉をやわらかくする方向に使えます。あとで紹介する鶏むね肉のレシピは、まさにそれを狙ったものです。
冷凍するとうま味が増える|作り置きの前にやること
下処理まで済ませたら、その日に使わないぶんは冷凍してください。きのこは「冷凍すると味が落ちる」食材ではなく、むしろ逆です。
きのこのうま味の正体はグアニル酸という成分で、細胞の中にある核酸が酵素に分解されることで生まれます。生のきのこでは、核酸と酵素は細胞に隔てられていてほとんど出会いません。ところが冷凍すると、できた氷の結晶が細胞を壊します。解凍のときに核酸と酵素が混ざり合い、そこで一気にうま味が作られる、という仕組みです。冷凍してから加熱したきのこは、生のまま調理したものの2倍前後のグアニル酸を持つとされています。
保存の目安を整理しておきます。きのこは生鮮品のなかでは日持ちが短いほうなので、数字を頭に入れておくと迷いません。
| 状態 | 保存場所 | 保存の目安 |
|---|---|---|
| 買ったまま(袋入り) | 冷蔵 | 2〜5日 |
| 下処理して生のまま | 冷凍 | 約1か月 |
| 加熱して味をつけた作り置き | 冷蔵 | 3〜4日 |
なめこを冷凍するときだけ、ひとつコツがあります。石づきを落としてバラし、洗わずにそのまま袋に入れることです。濡らしてから凍らせると粒どうしがくっついて塊になり、使うときに割れません。使うときは凍ったまま鍋へ入れてください。
レンジ10分でできる、秋のきのこ作り置き2品

下処理を覚えたら、あとは仕込むだけです。どちらも火を使わず、耐熱ボウルと電子レンジだけで作れます。ふたつ合わせて実働10分ほど。買ってきた日に並行して仕込んでしまうのがおすすめです。
なめこのなめたけ風(レンジ4分)
市販のなめたけを買わなくなる一品です。ごはんにも、豆腐にも、大根おろしにも合います。
| 材料(作りやすい分量) | 分量 |
|---|---|
| なめこ | 1袋(100g) |
| しょうゆ | 大さじ1 |
| みりん | 大さじ1 |
| 酒 | 大さじ1 |
| しょうが(すりおろし) | 小さじ1/2 |
- なめこは洗わずに袋から出し、ほぐしておく(株付きなら石づきを落としてばらす)。
- 耐熱ボウルに調味料をすべて入れて混ぜ、なめこを加える。
- ふんわりラップをかけ、600Wで3分加熱する。
- いったん取り出して混ぜ、ラップなしでさらに1分加熱する。粗熱がとれたら保存容器へ。
舞茸と鶏むねのレンジ蒸し(レンジ5分+蒸らし5分)
舞茸のたんぱく質分解酵素を、あえて味方につけるレシピです。鶏むね肉は皮なしの生100gあたりエネルギー105kcal、たんぱく質23.3g、脂質1.9g(日本食品標準成分表2020年版・八訂)。安くて高たんぱく、けれどパサつきやすいという弱点を、舞茸が補ってくれます。
| 材料(2〜3回分) | 分量 |
|---|---|
| 鶏むね肉(皮なし) | 1枚(約250g) |
| 舞茸 | 1パック(約100g) |
| 酒 | 大さじ1 |
| 塩 | 小さじ1/3 |
| ごま油 | 小さじ1 |
- 鶏むね肉を繊維を断つ向きに、1cmほどのそぎ切りにする。
- 舞茸は手でひと口大に裂く。
- 耐熱皿に舞茸を敷き、その上に鶏肉を重ならないように並べる。酒・塩・ごま油をまわしかける。
- ふんわりラップをかけ、600Wで5分加熱する。
- 取り出さずにラップをしたまま5分置く。この蒸らしで中心まで火が入る。
\味が濃い原木栽培のなめこを取り寄せる/
なめこと舞茸は栄養の役割が違う|使い分けの目安
同じきのこでも、なめこと舞茸では持っているものがかなり違います。日本食品標準成分表2020年版(八訂)増補2023年の数値を並べると、その差がはっきりします。
| 可食部100gあたり | なめこ(株採り・生) | まいたけ(生) |
|---|---|---|
| エネルギー | 21kcal | 22kcal |
| たんぱく質 | 1.8g | 2.0g |
| ビタミンD | 0μg | 4.9μg |
| カリウム | 240mg | 230mg |
目を引くのはビタミンDです。舞茸には100gあたり4.9μg入っているのに対して、なめこは0μg。日照時間が短くなる東北の冬に向けて、舞茸を切らさないようにしておく意味はここにあります。いっぽう、なめこのとろみは汁物にしたときにのどごしをよくして、料理が冷めにくくなるという役割を持っています。
なめこのぬめりを「ムチン」と説明している記事をよく見かけますが、この呼び方は誤りとされています。青森県おいらせ町が2024年に、給食の献立表に載せた「ムチンという食物繊維」という記述を訂正して公表しています。きのこの世界では、ぬめりの成分は粘液多糖体と呼ぶよう改められています。細かい話ですが、人に説明するときは気をつけたいところです。
山形は原木なめこの生産量が日本一
ここまで書いてきて、地元の話にも触れておきたくなりました。山形県は、なめこの産地としてかなり上位にいます。
林野庁の令和6年特用林産基礎資料によると、なめこの全国生産量は23,656トン。1位は新潟県の5,545トン、2位が長野県の5,029トン、そして3位が山形県の4,081トンです。上位3県で全体の6割を占めていて、山形はそのうちの一角ということになります。
さらに山形県が公表している「山形県の日本一」には、原木なめこの生産量が全国1位と記されています。令和6年の数字で、全国36.2トンのうち山形県が10.3トン。原木栽培というのは、菌床ではなく実際の木に菌を植えて育てる昔ながらのやり方で、手間がかかるぶん、粒が大きく味が濃く出ます。市販のなめこと食べ比べると、香りの立ち方がまるで違います。
山形県山菜・きのこ振興会によれば、県産なめこの旬は10月から11月ごろ。天然ものは、谷すじのブナやカエデといった広葉樹の風倒木や切株に生えます。9月下旬から採れはじめて、11月中旬まで。ちょうどこれから、いちばんいい時期に入っていくところです。
ちなみに舞茸のほうは、同じ資料で新潟県が35,597トンと、全国56,590トンの63%を占めています。舞茸を食べるとき、その3個に2個は新潟から来ている計算になります。
庄内の秋に何がいつ出てくるのかは、こちらに月別でまとめています。
関連記事
>庄内の秋の味覚カレンダー|9〜11月の旬を月別に解説
今日紹介したきのこを、秋鮭と合わせるレシピもあります。同じレンジ調理なので、続けて仕込めます。
関連記事
>秋鮭の簡単レシピ|レンジ10分のきのこ蒸しと作り置き
よくある質問
まとめ
秋のきのこで覚えることは、そう多くありません。なめこは、うま味の正体であるぬめりを流さないように、洗わずにそのまま鍋へ。舞茸は水を吸うと香りも食感も逃げるから、ペーパーで拭いて手で裂く。どちらも「水にあてない」と覚えておけば、売り場でも台所でも迷わなくなります。
そして、使い切れないぶんは迷わず冷凍してください。凍らせることで細胞が壊れ、うま味のグアニル酸がむしろ増えます。凍ったまま鍋に入れるだけで、生のときよりおいしくなる。これは、きのこがくれるいちばん親切な性質だと思っています。
山形の原木なめこは、これから10月、11月といちばんいい時期に入ります。粒の大きな一袋が手に入ったら、まずは何も足さずにみそ汁にしてみてください。同じ「なめこ」という名前でも、こんなに違うのかと驚くはずです。今日紹介した作り置きは、そのついでに仕込めるくらい簡単なものばかりです。
\旬の山形県産きのこを産地から取り寄せる/

