大根とにんじんが冷蔵庫に眠っている。でも今夜は、いつもと同じ煮物じゃなく、もう少し甘くてコクのある一皿が食べたい。そう思いながらも、すき焼きを一から準備する気力はない。そんな夜が、冬の山形ではよくあります。
根菜の煮物というと「薄味で地味」「時間がかかる」と思いがちですが、すき焼きの甘辛い割り下で煮込むと、大根もにんじんも劇的においしくなります。牛肉とだし汁の旨味が根菜にしっかり染み込んで、ごはんが止まらなくなる深い味わいに。
今回ご紹介するのは「大根とにんじんのすき焼き風煮物」。牛肉・しめじ・さやえんどうも入って食べ応えは抜群。砂糖・しょうゆ・酒の基本の甘辛味で、特別なタレも買わずに作れます。
東北の冬は根菜が豊富で、地元の直売所にはどっしりした大根とにんじんが山積みになります。ただ煮るだけでなく、すき焼き風の甘辛煮にするだけで、食卓の格がぐっと上がります。今夜のおかずに、ぜひ作ってみてください。

荒生沙緒利
SAORI ARAO
- 山形県アンバサダー@東北観光推進機構 東北PR局
- フリーアナウンサー
- 山形県酒田市在住

大根とにんじんのすき焼き風煮物とは|甘辛い割り下が染みる東北の根菜煮物文化
山形県の冬の食卓に欠かせない根菜といえば、大根とにんじんです。秋の終わりから収穫が始まり、雪が積もる頃には地下蔵やビニール袋に入ったものが冷蔵庫に常備されている。そんな暮らしが今も続いています。
根菜の煮物は東北の郷土料理の定番中の定番。醤油ベースのしみじみとした薄味が基本ですが、今回はそこにすき焼きの割り下のような甘辛の煮汁をまとわせます。砂糖・しょうゆ・酒のシンプルな調味料だけで、根菜がごちそうに変わる。この一皿を知ってから、冬の煮物に対する考え方が少し変わりました。
すき焼きといえば鍋を囲むごちそう料理のイメージですが、この煮物はお鍋いらずの普通の煮物として作れます。牛肉の旨味と甘辛い煮汁が大根の中まで染み込んで、根菜だけの煮物とは比べ物にならないコクと深みが生まれます。
大根の「下茹で」が味の決め手
このレシピで重要なのが、大根の下茹でです。米のとぎ汁で柔らかくなるまでしっかり煮てから本調理へ。この下茹でを丁寧にすることで、大根のアクが抜け、甘辛い煮汁が中心まで均一に浸透します。
米のとぎ汁には大根のえぐみを取る効果があるといわれており、昔から東北の家庭でも大根を煮るときは米のとぎ汁を使う習慣がありました。手間をかけた分だけ、仕上がりのやわらかさと味の染み込み具合が違ってきます。
上の部分の大根が甘くて煮物向き
レシピでは「大根の上のほう」を使うと指定されています。大根は部位によって味と食感が異なります。葉の近い上部は糖分が多く甘みが強いため、甘辛い煮物との相性が抜群。下部は辛みが強く大根おろしや漬物に向いています。煮物を作るときは、上部を選ぶのがポイントです。
材料(3〜4人分)|調理時間約60分
| 材料 | 分量 |
| 大根(上のほう) | 10cm |
| にんじん | 1/2本 |
| しめじ | 1株 |
| さやえんどう | 約10さや |
| 牛肉薄切り | 100g |
| 砂糖 | 大さじ3 |
| しょうゆ | 大さじ3 |
| 酒 | 1カップ |
| だしの素 | 小さじ1 |
材料は全部で9つ。根菜と調味料、あとは牛肉薄切りが100gあれば作れます。しめじとさやえんどうは彩りと食感のアクセント。さやえんどうが手に入りにくい季節はスナップえんどうや絹さやで代用できます。
作り方|大根の下茹でをしっかりすることが全ての要
STEP1|大根を米のとぎ汁で柔らかくなるまで下茹でする
大根は皮をむき、一口大の乱切りにします。鍋に大根と米のとぎ汁を入れ、箸がすっと通るくらい柔らかくなるまで中火〜弱火で煮ていきます。時間の目安は25〜30分ほど。
米のとぎ汁がない場合は、水に少量の生米を加えて代用できます。大根のえぐみとアクをしっかり取り除くのがここでの役割。この一手間が、仕上がりの味に直結します。下茹でが終わったら、ざるにあけて水で洗い流しておきましょう。
STEP2|にんじんとしめじを切る

大根を下茹でしている間に、にんじんとしめじを準備します。にんじんは皮をむき、大根と同じく一口大の乱切りに。大根と大きさを揃えることで、火の通り具合が均一になります。しめじは石づきを切り落とし、手でほぐしてバラバラにしておきます。
さやえんどうは筋を取り除き、そのままか斜め半分に切っておきます。さやえんどうは加熱しすぎると色が悪くなるため、最後に加えるので、この段階では切るだけでOKです。
STEP3|鍋に戻して野菜と調味料を加えて煮込む

水洗いした大根を鍋に戻し、にんじん・しめじを加えます。砂糖大さじ3・しょうゆ大さじ3・酒1カップ・だしの素小さじ1を加えて、中火で煮ていきます。
煮汁が全体に行き渡ったら、蓋をして弱火で10〜15分ほど蒸し煮にします。途中で一度かき混ぜ、にんじんに箸がすっと通るくらいになれば次のステップへ。甘辛い煮汁の香りが台所に広がってくる、ここが一番気持ちのいい瞬間です。
STEP4|牛肉を加えて火を通す

野菜に火が通って味が染みたら、牛肉薄切り100gをほぐしながら加えます。牛肉は火が通りすぎると硬くなるため、弱火でゆっくり、色が変わったらすぐ全体を混ぜ合わせましょう。
牛肉の旨味が煮汁に溶け出し、甘辛の味わいにさらに深みが加わります。肉に完全に火が通ったら、さやえんどうを加えてさっと火を通して完成です。さやえんどうは1〜2分で十分。鮮やかな緑色が残るうちに火を止めるのがコツです。
STEP5|器に盛り付けて完成

煮物を深めの器に盛り付けます。大根・にんじん・しめじ・牛肉・さやえんどうが色とりどりに揃い、甘辛い煮汁がとろりと絡んだ、見た目もごちそうな一皿が完成します。熱々のごはんと一緒に、ぜひどうぞ。
美味しく作るコツ|根菜に味をしっかり染み込ませる3つのポイント
- 大根の下茹ではしっかり柔らかくなるまで
大根が硬いまま本調理に入ると、中まで味が染み込みません。箸がすっと抵抗なく通るくらい、しっかり下茹でするのが鉄則です。 - 大根とにんじんを同じ大きさの乱切りにする
大きさが揃っていると火の通り具合が均一になり、一部だけ煮崩れたり、硬いままということが防げます。目安は2〜3cm程度の一口大。 - 牛肉は野菜が柔らかくなってから最後に加える
最初から牛肉を入れて煮込むと硬くなります。根菜に完全に火が通ってから、仕上げに牛肉を加えるのが正解。旨味だけを煮汁に溶け出させるイメージで、さっと火を通すだけでOKです。
大根×にんじんが体にうれしい理由|東北の冬を支える根菜の栄養
大根は消化酵素が豊富な「天然の胃薬」
大根にはジアスターゼ(アミラーゼ)という消化酵素が豊富に含まれています。でんぷんの消化を助ける働きがあり、胃もたれや食べ過ぎのときに食べると胃腸の負担を軽くしてくれます。東北の人が昔から「大根は薬になる」といってきたのは、この働きを経験的に知っていたからかもしれません。
- 消化酵素(ジアスターゼ)
でんぷんの消化を促進し、胃もたれ・食べ過ぎの不快感を和らげます。 - ビタミンC
免疫機能を助け、肌の調子を整えます。冬の風邪予防にも。 - 食物繊維
腸内環境を整え、便秘の予防に役立ちます。
にんじんのβ-カロテンは脂溶性、煮物との相性最高
にんじんに含まれるβ-カロテン(ビタミンA前駆体)は、脂溶性のため油や脂と一緒に摂ると吸収率がアップします。今回のレシピは牛肉の脂を一緒に煮込むため、β-カロテンの吸収という点でも理にかなった組み合わせです。
β-カロテンは体内でビタミンAに変換され、目の健康維持・免疫機能サポート・肌の潤いに役立ちます。冬の乾燥や日照時間が短い東北の季節に、積極的に取り入れたい栄養素のひとつです。
牛肉の鉄分・しめじのビタミンDも見逃せない
牛肉薄切りには鉄分・亜鉛・ビタミンB12が含まれ、貧血予防や疲労回復を助けます。しめじにはビタミンDが含まれ、カルシウムの吸収を促進する働きがあります。日照時間が少ない東北の冬にビタミンDを食事から補えるのはうれしいポイントです。
「野菜・きのこ・肉」を一皿でまとめて食べられるこの煮物は、栄養バランスの観点からも冬の食卓にぴったりです。
\プロの味が一本で決まるすき焼のたれ/
アレンジ|すき焼き風煮物を3通りで楽しむ
- 豆腐を加えてボリュームアップ
本家すき焼きのように木綿豆腐を加えるのがおすすめです。牛肉と甘辛の煮汁をたっぷり吸った豆腐は、それだけでごちそう。食べ盛りの家族がいるときは豆腐を足してかさを増やすと、コスト面でも助かります。 - しらたきを加えて低カロリー仕立てに
すき焼きに欠かせないしらたきを加えれば、よりすき焼きらしい一皿に。カロリーを抑えながら食べ応えが増すので、ダイエット中でも満足感が得られます。しらたきは下茹でしてアク抜きしてから加えるのがポイント。 - 残った煮汁で卵とじ丼に
翌日に煮物が残ったら、煮汁ごと鍋に入れて温め直し、溶き卵でとじてごはんにかけると即席のすき焼き丼が完成します。煮汁の甘辛い味が卵と絡んで絶品。一度で二度おいしい、冬の定番アレンジです。
きのこ類はしめじ以外にも、えのきや椎茸・舞茸などでも美味しく作れます。冷蔵庫にあるきのこを何種類か組み合わせると、旨味がより複雑になります。
根菜をつかった煮物でほかにも気になるレシピがあれば、こちらもぜひ。
関連記事
>【里芋のほんのり甘辛煮】レンジ下ゆでで20分!オイスター甘辛でご飯がすすむほっこり煮物
>【みそ野菜煮込み】レンジ下ごしらえで煮込み10分!根菜たっぷり体ぽかぽか味噌おかず
>【ひじきの味噌炒め】1食50円でご飯がすすむ!味噌×ごま油の香ばし常備菜レシピ
まとめ|冬の根菜を甘辛く煮て、食卓をほっと温める一皿に
大根とにんじんを牛肉・しめじ・さやえんどうと一緒に、砂糖・しょうゆ・酒の甘辛煮汁で煮込む「大根とにんじんのすき焼き風煮物」をご紹介しました。
- 大根は米のとぎ汁で下茹でしてアクを取り、中まで柔らかくするのが味染みの決め手
- すき焼き風の甘辛煮汁(砂糖・しょうゆ・酒だけ)で、根菜がごちそうに変わる
- 牛肉は野菜が煮えてから最後に加えることで、柔らかくジューシーに仕上がる
- 大根の消化酵素・にんじんのβ-カロテン・牛肉の鉄分で冬の体を内側から支える
- 残った煮汁は翌日に卵とじ丼にアレンジできて、一品で二度おいしい
山形の冬は雪が降り積もり、外に出るのも億劫になる季節。そんなときに大根とにんじんがあれば、台所を温めながら甘辛い煮物が作れる。それだけで、なんとなく冬を乗り越えられる気がします。
東北の根菜の底力を、すき焼き風の甘辛煮で引き出してみてください。今夜の食卓が、ほっと温かくなりますように。

