芋煮は、少なく作るほうが難しい料理です。里芋をひと袋、こんにゃくを1枚とそろえていくうちに、気づけば鍋いっぱい。山形では芋煮はたっぷり作るのが地元流と言われるほどで、翌日の鍋にまだ汁と具が残っているのは、秋のいつもの景色です。
とはいえ、同じ味が3日続くと箸が止まりがちですよね。実は山形には、残った芋煮を別の料理に変える定番の食べ方があります。
東北観光推進機構で山形県アンバサダーを務め、酒田市で暮らしている私が、残りの芋煮を最後までおいしく食べきる3通りのリメイクをまとめました。鍋に残った汁と具の量で、カレー、カレーうどん、グラタンを選び分けるやり方です。
あわせて、翌日まで安全に持たせる保存のしかたも最初にお伝えします。火を止めたあとの鍋の扱いで、翌日のおいしさも安全も決まるからです。
やま君張り切って芋煮を作ったら、3日分くらい残っちゃったよ。
宮さん2日目も3日目も同じ味だと、さすがに飽きてくるのよね。

荒生沙緒利
SAORI ARAO
- 山形県アンバサダー@東北観光推進機構 東北PR局
- フリーアナウンサー
- 山形県酒田市在住
残った芋煮は鍋ごと置かない|翌日もおいしく食べるための保存

リメイクの前に、いちばん大事なのが保存です。カレーやシチューのような煮込み料理で気をつけたいのが、ウェルシュ菌という食中毒の原因菌。農林水産省によると、この菌が増えやすいのは約12〜50℃で、大きな鍋のまま常温でゆっくり冷めていく時間が、ちょうどその温度帯にあたります。
鍋ごと常温で一晩置くのは避けてください。ウェルシュ菌は熱に強い芽胞をつくり、100℃で加熱しても生き残ることがあります。食べる前によく火を通せば安心、とは言い切れないのがこの菌のやっかいなところです。
農林水産省がすすめている保存と温め直しのポイントは、次の4つです。
①あら熱を早く取る/火を止めたら鍋のまま放置せず、できるだけ早く冷まします。
②底の浅い容器や保存袋に小分けする/平たく広げると、温度が早く下がります。
③すぐに冷蔵庫か冷凍庫へ/その日のうちに食べきれない分は、早めに冷凍に回します。
④温め直しは鍋底からかき混ぜて中心まで/とろみのある料理ほど、よく混ぜながら加熱します。
冷蔵で置くなら、2日以内をめどに食べきるのがおすすめです。煮物の冷蔵保存は一般に3〜4日が目安とされますが、芋煮は大鍋で作って食卓に出したままの時間が長くなりがちなので、私は安全側に見ています。
残り方で選ぶ|カレー・うどん・グラタンの使い分け
芋煮のリメイクは、鍋に何がどれだけ残っているかで選ぶと失敗しません。
| 鍋の残り方 | おすすめのリメイク | かかる時間の目安 |
|---|---|---|
| 汁も具もたっぷり | 芋煮カレー | 約10分 |
| 汁が多く、具は少なめ | 芋煮カレーうどん | 約10分 |
| 汁が少なく、里芋が残った | 芋煮グラタン | 約15分 |
牛肉と醤油の山形風でも、豚肉と味噌の庄内風でも、3つとも作れます。味噌味の芋煮はカレーにするとコクが増し、グラタンにすると味噌とチーズが合わさって、まろやかな味わいになります。
さおり酒田のある庄内では、豚肉と味噌の芋煮が主流です。味噌味の残りは、ぜひグラタンで試してみてください。
芋煮カレー|ルウを溶かすだけで10分

いちばん手軽で失敗しにくいのが、カレーです。牛肉と醤油、里芋のうま味が溶けた汁がそのままカレーのベースになるので、玉ねぎを炒める手間もいりません。
材料 2人分
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 芋煮の残り 汁と具をあわせて | 約500ml |
| 市販のカレールウ | 2皿分を目安に少なめから |
| 水 | 汁が足りないときに50〜100ml |
| ご飯 | 2人分 |
作り方
- 芋煮を汁ごと鍋に移し、大きな里芋は半分に切ります。
- 中火にかけ、煮立ったら火を止めてカレールウを割り入れ、溶かします。
- ふたたび弱火にかけ、鍋底からかき混ぜながら、とろみがつくまで3〜5分煮ます。
- 味をみて、濃ければ水を、薄ければルウを少しずつ足します。ご飯にかけて完成です。
\次の芋煮は本場の味から/
芋煮カレーうどん|山形の芋煮会の定番の締め

山形の芋煮会では、鍋の具が少なくなってからが本番、という人も少なくありません。残った汁に市販のカレールウとうどんを入れる、芋煮カレーうどんです。2017年の日本経済新聞の記事では、この食べ方はそれまでの30年ほどで急速に広まり、山形市内で行われる芋煮の7〜8割が締めにカレーうどんを楽しんでいると紹介されています。
家で作るときも、汁を少し多めに残しておけばそのまま使えます。
材料 1人分
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 芋煮の汁と残りの具 | 約300ml |
| 市販のカレールウ | 1皿分を目安に少なめから |
| ゆでうどん | 1玉 |
| 刻んだ長ねぎや青ねぎ | 少々 |
作り方
- 鍋に芋煮の汁と具を入れ、中火で温めます。
- 煮立ったら火を止め、カレールウを溶かします。
- 弱火に戻してうどんを入れ、うどんが温まるまで2〜3分煮ます。
- 器に盛り、刻んだねぎをのせて完成です。
前の日に作った芋煮カレーが残っていたら、それも使えます。ハウス食品のリメイクレシピでは、残りカレー150mlに3倍濃縮のめんつゆ大さじ1と1/2、水100mlを合わせて、1人分のカレーうどんにしています。カレーの濃さに合わせて、めんつゆと水は加減してください。ただし、芋煮を作った日から数えて2日以内に食べきる目安は変わりません。
芋煮そのものの配合や、内陸と庄内の味の違いは、こちらの記事にまとめています。
関連記事
>芋煮の作り方 山形風|醤油の黄金比と庄内の味噌味
芋煮グラタン|里芋をつぶせばホワイトソースいらず

汁が少なくなって、里芋だけがごろっと残ったときはグラタンです。里芋は加熱してつぶすとねっとりしたとろみが出るので、ホワイトソースを作らなくても、牛乳とチーズだけでグラタンらしくまとまります。里芋のでんぷん質を生かしてホワイトソースなしで仕上げる里芋グラタンは、レシピサイトでもよく紹介されている作り方です。
材料 2人分
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 芋煮の残りの具 | 茶碗2杯分ほど |
| 牛乳 | 100ml |
| ピザ用チーズ | 40g |
| パン粉 | 大さじ1 |
作り方
- 芋煮の具を耐熱の器に入れ、里芋の半分ほどをフォークで粗くつぶします。こんにゃくは薄く切ると全体になじみます。
- 牛乳を加えて混ぜ、ふんわりラップをして電子レンジ600Wで2分ほど温めます。
- いったん混ぜて中心まで温まっているのを確かめ、チーズとパン粉をのせます。
- オーブントースターで、焼き色がつくまで5〜8分焼きます。
芋煮の汁がしみた里芋なので、味つけは足さなくてもまとまります。物足りなければ、焼く前に塩こしょうを少し加えてください。
食べきれない芋煮は冷凍できる|こんにゃくだけは先に外す
2日以内に食べきれそうになければ、冷凍に回します。里芋の煮物は冷凍でき、保存期間はおよそ1か月が目安です。
| 保存方法 | 目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 2日以内 | 浅い容器に小分けして、早く冷やす |
| 冷凍 | 約1か月 | 汁けをきり、使う量ずつラップで包んで保存袋へ |
冷凍するときに外しておきたいのが、こんにゃくです。こんにゃくは凍らせると水分が抜けてスポンジのような穴ができ、ゴムのようにかたい食感に変わります。煮物のぷるんとした食感とは別物になるので、冷凍前に取り出して、先に食べてしまうのがおすすめです。
解凍は電子レンジで。冷凍した里芋はやわらかめの食感になるため、汁気のあるカレーやカレーうどんに回すと、食感の変化が気になりにくくなります。
芋煮用に買った里芋が余ったら、レンジで下ゆでして作る甘辛煮もおすすめです。
関連記事
>【里芋のほんのり甘辛煮】レンジ下ゆでで20分!オイスター甘辛でご飯がすすむほっこり煮物
よくある質問
まとめ|残り方で選べば芋煮は最後までおいしい
芋煮の残りは、鍋の中身を見て選べば迷いません。
①汁も具もたっぷり/ルウを溶かして芋煮カレーに。
②汁が多く具は少なめ/山形の定番の締め、芋煮カレーうどんに。
③里芋が残った/つぶして牛乳とチーズで芋煮グラタンに。
どの食べ方でも、最初の一手は鍋ごと置かずに小分けして冷やすこと。冷蔵なら2日以内、食べきれない分はこんにゃくを外して冷凍へ回せば、秋の大鍋を最後までおいしく楽しめます。
山形の芋煮会の時期や、河原での地元流の楽しみ方は、こちらの記事で紹介しています。
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