山形の郷土料理「だし」の作り方|残暑に効く地元の配合

山形の郷土料理「だし」を盛った白い器

暑さで食欲が落ちて、火の前に立つ気にもなれない。そんな残暑の夕方に、山形の食卓へ必ず登場するのが「だし」です。

やま君

夏になると献立が毎日同じになる…。冷たくてご飯が進むおかず、ないかな。

宮さん

山形の「だし」って聞くけど、納豆が入ってるの? 作るの難しそう。

結論から言うと、だしは包丁で刻んで和えるだけ。火を使わず10分で完成します。納豆も入っていません。

山形県アンバサダーとして東北の食を追いかけてきた私が、農林水産省「うちの郷土料理」に記録された基本の配合をベースに、失敗しない刻み方・アク抜き・ねばりの出し方までお伝えします。読み終える頃には、今日の夕飯にそのまま作れるはずです。

ブログ執筆者
あらお さおり

荒生沙緒利
SAORI ARAO

  • 山形県アンバサダー@東北観光推進機構 東北PR局
  • フリーアナウンサー
  • 山形県酒田市在住

目次

山形の「だし」とは?暑さが生んだ“食べる薬味”

小鉢に盛った山形の郷土料理「だし」
刻んだ夏野菜を和えるだけ。これが山形の「だし」(イメージ)

だしは、なすやきゅうりなどの夏野菜と、みょうが・青じそといった香味野菜を細かく刻んで味つけした料理です。汁物の「出汁」とはまったくの別物で、ごはんにのせて食べます。

農林水産省の「うちの郷土料理」によると、主な伝承地域は村山地域と置賜地域。山々に囲まれ、夏は高温多湿で暑さが厳しい村山地域を中心に食べられてきたとされています。

山形市では1933年7月25日に40.8℃を記録し、2007年に熊谷市・多治見市の40.9℃に抜かれるまで74年間も日本の最高気温記録を保持していました。だしという料理が生まれた背景には、この盆地の暑さがあります。

名前の由来には諸説あり、出汁のように他の食材を引き立てるから、包丁で野菜を「出す」から、刻んで味つけしただけですぐ食卓に「出す」から、などが伝わっています。農繁期のスピード料理として親しまれてきた背景も、この名前とつながっていますね。

さおり

だしは「100軒の家があれば100種類の味」と言われるほど、家ごとに配合が違う料理。だからこそ、まずは基本形を覚えてから好みに寄せていくのが近道です。

材料|基本は「なす・きゅうり+香味野菜」

山形のだしの材料 なす きゅうり みょうが しょうが ねぎ
基本の顔ぶれ。なす・きゅうり・みょうが・しょうが・ねぎ(イメージ)

下の表は、農林水産省「うちの郷土料理」に掲載されている山形県のだしの材料(4人分)です。しょうがと青ナンバン(辛みのある青唐辛子)は好みで加減してください。

材料(4人分)分量
なす小2個
きゅうり1本
みょうが2本
青じそ4枚
ねぎ1/2本
しょうが(お好みで)1かけ
青ナンバン(お好みで)2本
カツオ節適量
だし醤油適量
出典:農林水産省「うちの郷土料理」山形県・だし

ここになっとう昆布を加えると、いわゆる「ねばりのあるだし」になります。名前に納豆とありますが、原料は北海道産のがごめ昆布。粘りの強い昆布を細かく刻んだもので、大豆は一切入っていません。

作り方|刻んで、さらして、和えるだけ

刻んだ夏野菜をボウルで和えた山形のだし
水気を切ってから和えるのが、味をぼやけさせないコツ(イメージ)

農林水産省に記録された手順はとてもシンプルで、「野菜を全部みじん切りにして、一度水に入れてアクを抜き、水分を切る」「器に盛り、カツオ節をかけ、だし醤油をかける」の2ステップだけ。実際に作るときは、次の順番で進めるときれいに仕上がります。

  1. 刻む/なす・きゅうり・みょうが・青じそ・ねぎを、5〜7mm角を目安にみじん切りにします。
  2. さらす/刻んだなすを水に2〜3分さらしてアクを抜きます。変色が気になるときは、0.5〜1%程度の塩水(水1カップに塩小さじ1/4弱)にさらすと防ぎやすくなります。
  3. 水気を切る/ざるにあげ、キッチンペーパーでしっかり押さえます。ここが味の濃さを左右します。
  4. 和える/ボウルで全体を混ぜ、だし醤油とカツオ節を加えて味を調えます。なっとう昆布を入れる場合はここで。
  5. 冷やす/冷蔵庫で20〜30分おくと、味がなじんでねばりも出てきます。

水気を切らずに和えると、翌日には水っぽくなって味がぼやけます。面倒でも、ここだけは省略しないでください。

おいしく作る3つのコツ

①刻みは5〜7mm角でそろえる/細かすぎると食感が消え、大きすぎると薬味になりません。大きさをそろえるだけで見違えます。
②味つけは「薄め」から/時間をおくと野菜から水分が出て味が動きます。だし醤油は控えめに入れて、食べる直前に足すのが確実です。
③ねばりは後入れ/なっとう昆布・オクラ・山芋を使うなら、和える工程の最後に。先に入れると全体がもったりして、香味野菜の香りが立ちません。

私が必ず入れるもの

みょうがと青じそは、多いかなと思う量でちょうどいいと感じています。香りが立つと、醤油が少なくても満足感が出るからです。減塩したい日ほど香味野菜を増やす、というのが私の作り方です。

ごはんだけじゃない|だしの食べ方

炊きたてのごはんにのせた山形のだし
各自が好きな量をごはんにのせるのが山形流(イメージ)

山形では大きめの器に盛って食卓の真ん中に置き、各自が好きな量をごはんにのせて食べるのが一般的です。ただ、使い道はごはんだけではありません。

  • 冷奴にのせる/豆腐1丁が立派な一品になります
  • そうめん・そばの薬味に/つゆに入れると、最後まで飽きずに食べられます
  • 焼いた肉や魚のソースに/脂のあるものほど、香味野菜の酸味のない爽やかさが効きます

作り置きの副菜として考えると、生野菜なので冷蔵2〜3日が目安。清潔な容器に入れ、食べる前にひと混ぜしてください。

同じ庄内の夏野菜を使った作り置きが気になる方には、こちらの記事もおすすめです。
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【なすごんげ】庄内に伝わる“なす1種類だけ”の郷土レシピ|作り置き3〜4日・ナスの美容効果も

材料が手に入らないときは

なすときゅうりはどこでも買えますが、なっとう昆布だけは県外のスーパーで見つけにくいのが正直なところ。乾物で日持ちするので、通販でまとめて買っておくと確実です。

\ねばりの決め手はこれ/

「まず味を知ってから作りたい」という方は、瓶詰めや惣菜タイプのだしを一度食べてみるのも手。理想の味を決めてから作ると、配合で迷わなくなります。

\まずは本場の味を確かめる/

同じ時期に旬を迎える山形の味も一緒にどうぞ。
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だだちゃ豆の食べ方|地元流アレンジ5選と冷凍保存のコツ

よくある質問(FAQ)

「だし」に納豆は入っていますか?

入っていません。ねばりの正体は「なっとう昆布」で、これは北海道産のがごめ昆布を細かく刻んだ乾物です。粘りが強い昆布なので、水分を含むと納豆のような糸を引きます。

ねばりは必ず必要ですか?

必須ではありません。基本の具材はなすときゅうりで、ねばりを出したい場合に山芋・オクラ・なっとう昆布などを混ぜる、という位置づけです。さっぱり食べたい日は入れなくて構いません。

何日くらい日持ちしますか?

生野菜を刻んだ料理なので、冷蔵で2〜3日が目安です。時間とともに水分が出るため、清潔な容器で保存し、食べる前にひと混ぜしてください。

味つけは醤油だけですか?

基本はだし醤油とカツオ節です。ただし、だしは「100軒の家があれば100種類の味」と言われる料理。基本形を覚えたら、好みで調整してください。

まとめ|刻むだけで、夏の食卓が変わる

①だしは村山・置賜に伝わる夏の郷土料理/なすときゅうりを刻んで和えるだけ、火を使わず10分。
②おいしさの決め手は刻みの大きさと水気切り/5〜7mm角でそろえ、さらしたあとはしっかり押さえる。
③ねばりが欲しければ なっとう昆布/北海道産がごめ昆布の乾物で、納豆は入っていない。
④日持ちは冷蔵2〜3日/ごはん・冷奴・そうめんの薬味まで使い回せる。

暑さの厳しい土地で、火を使わず野菜をたっぷり食べるために生まれた料理。だから残暑の今こそ力を発揮します。まずは基本の配合で作ってみて、「わが家の味」に育ててみてください。

\乾物だから買い置きできます/

山形の郷土料理「だし」を盛った白い器

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